こんにちは!研修講師を育成して早や40年!今井尻由利子です。
★この記事は、コールセンターの新人講師の方で、次のような悩みをお持ちの方のために書いています。
✅わかりやすく説明する方法がわからない
✅「説明は上手いが参加者に伝わっているのか疑問」と言われた
✅参加者の反応がイマイチに思える
コールセンターに勤務するAさんは、デビューしたばかりの新人講師です。Aさんには、わかりやすい説明という点で何やら悩みがあるようです。
Aさんの研修を見学していたマネージャーから「説明はとても上手いんだけど、みんなに伝わっているのかなぁ」と言われたそうなのです。
「メリハリをつけてしっかり説明しているんですけど…。今井尻さん、研修を観ていただけますか」とAさんに頼まれ、オブザーバー(研修の観察者)として参加することにしました。
カツゼツよく声の表情も豊かに説明するAさんの、いったい何が問題だったのでしょうか。
わかりやすい説明に欠かせない2つの視点
Aさんは、論理的に説明することについては自信があるようです。
話が横道にそれることなく筋道を立てて話しています。また、力強く大きな声で話したり、ゆっくりとトーンを押さえて話したり、内容によって使い分けているのでポイントがとてもわかりやすいです。
しかしマネージャーからは「説明はとても上手いんだけど、みんなに伝わっているのかなぁ」と言われてしまったわけです。実は私もマネージャーと同じ意見でした。
Aさんの説明は、残念ながらわかりやすく納得度が高いとは言えないものでした。
その理由は、Aさんは論理的に説明はしているけれど具体例が少ない点にあります。
論理的なので頭には入ってくるけれど、“何となくストンと腹落ちしないなあ” という気持ちになるのです。マネージャーの「みんなに伝わっているのかなぁ」という言葉は、そんな気持ちを表していたのですね。
では、わかりやすく納得度の高い説明とはどうすればよいのでしょうか。
「クラリティ」と「グラウンディング」を組み合わせる
わかりやすく伝え、参加者の納得度を高めるためには2つの視点で考えることが大切です。
①クラリティ(明確さ)
⇒論理的に筋道を立てて明確に提示し説明する能力
②グラウンディング(落とし込み)
⇒具体的に効果的な方法で説明する能力
では、コールセンターの「コミュニケーターの使命」を例にして、この2つについて説明しましょう。
たとえば・・・
コミュニケーターの使命は、「クライアントの顔」という自覚を持ち、電話の向こうのお客さまから感謝されるような応対をすることです。そして、応対したすべてのお客さまに満足して いただくことです。
これは、コミュニケーターの使命について明確に説明していることになります。クラリティですね。
応対したすべてのお客さまに満足していただくとはどういうことでしょう?
たとえば、届いた商品が壊れていたというクレームをお受けしたとき、「宅配会社のミスです」とは言いません。お客さまにご迷惑をおかけしたことに違いないわけですから、共感して丁寧にお詫びします。
このようにコミュニケーターの仕事は、お客さまとのコミュニケーションにおいては、満足していただくことが求められるのです。
これは、応対したすべてのお客さまに満足していただくひとつの例を示しています。具体的に説明しているグラウンディングですね。
このように、言葉の定義を筋道を立てて説明するとともに、具体例もしっかり示してこそ “ストンと腹落ちする” というわけです。
いくら論理的に伝えていても、それだけでは単に言葉の意味を伝えただけになります。
スキルを教えるのであれば、それがどういう風に使われるのか具体的に示して落とし込んでこそ、納得度が高まるわけですね。
「クラリティ」「グラウンディング」のどちらか一方だけの場合
ではAさんのように「クラリティ」ばかりの場合、参加者はどのように思うでしょうか?
逆に、「グラウンディング」ばかりの場合はどうでしょうか?
●クラリティばかりの場合
⇒退屈で実践的か疑問になる
「これって、現場で本当に役に立つのかな?」
●グラウンディングばかりの場合
⇒目的不明、おもしろいかもしれないが混乱する
「いったい何のこと?これって目的はなに?」
Aさんは論理的な流れで話しているのですが、「グラウンディング」が少ないのです。
そのため、参加者は “説明(定義や言葉の意味、流れなど)は理解したけれど、実際に使えるのかな?” というような不安や不信の気持ちになってしまいます。
たとえば、コミュニケーターの使命を説明する際、「応対したすべてのお客さまに満足して いただくことです。皆さん、よろしいですか。」と言われただけとしましょう。
実際にどんなことなのか想像できるでしょうか?
Aさんが担当する研修の対象者は新人さんです。経験がないのですから、余計にグラウンディングが必要ですね。
グラウンディングは「たとえば」と言って具体例を示すだけでなく、自分の経験談を話すことも効果的です。結果的に例示していることになりますね。
「たとえば」を口癖にして具体例を話す習慣をつける
さて研修が終わり、Aさんにフィードバックの時間です。
改善点はただひとつ。わかりやすく納得度の高い説明には「クラリティ」と「グラウンディング」の2つの視点が必要であることです。
Aさんは「だからみんなは不安そうな顔をしていたんですね。反応がイマイチだったのも理由がよくわかりました。わかってないかもしれないと思って、余計に一生懸命説明ばかりしていました。」と、振り返っていました。
声の表情が豊かでメリハリもあり、もともと「クラリティ」の能力の高いAさんに「グラウンディング」が備われば、鬼に金棒ではないでしょうか😊
Aさんはフィードバックを受けて、このような目標を立てました。
「何かを説明したあと『たとえば』と必ず言う。癖になるくらい言います!」と宣言していました。
宣言どおり、Aさんは「たとえば」が口癖になり、いまでは「具体例の女王」とまで言われるようになりました。
また、Aさんはできるだけ自分の経験を話すようにしていました。コミュニケーター出身のAさんの経験談はとても力強い「グラウンディング」となっています。
もしあなたがAさんのように「わかりやすく納得度の高い説明はどうすればいいの」とお悩みの場合は、「クラリティ」と「グラウンディング」の視点で考えてみてくださいね。
「たとえば」が口癖になれば、あなたもきっと「具体例のキング」と言われるにちがいありません😊
でもこのような振り返りが自分でできない、客観的な意見が欲しいという方には、私からアドバイスさせていただきます。ぜひお声がけください。
最後まで読んでくださってありがとうございます😊
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