新人社内講師Aさんのお悩み相談「『私は無視されていた』とアンケートに書かれてしまいました」

こんにちは!研修講師を育成して早や40年!今井尻由利子です。

この記事は、デビューしたばかりの新人社内講師方で、次のような悩みをお持ちの方のために書いています。

✅話すときの視線、どこを見ればよいかがかわからない

✅全体を見ないでどちらか一方ばかりを見る癖がある

✅ひとりの参加者のみをつい見てしまう

今では講師として大活躍のAさん。
しかし、そんなAさんにも新人の頃の失敗があります。研修後のアンケートにとてもショックなことが書かれていたのです。

いったいどういうことなのでしょう。

目次

講師の視線は脳の構造と関係している

Aさんが講師デビューして間もない頃、こんな相談を受けました。
「この間の研修アンケートの中に、『Aさんは○○さんばかりを見ていて、私は無視されていた』というのがあったんです。」

今にも泣きそうな表情で話すAさん。ショックの大きさがよくわかります。

そりゃ、そうですよね。参加者から「無視されていた」なんて言われて、悲しくない講師がいるはずありません。”いったいどんな研修をしていたのか” “誰かひとりをエコヒイキするなんてことはないのに…” と自分を責めているAさんでした。

「とにかく一度、研修を観てみましょう」と私はAさんの研修にオブザーバー(研修の観察者)として参加することにしました。

参加者のひとりばかりを見つめてしまう新人講師

Aさんは、私がいることで多少は緊張しながらも、明るく元気に参加者とコミュニケーションを取りながら研修を進めていました。

大切なポイントを伝える際は、参加者のひとりに視線を止めたり、声のトーンを低くしたりなど、メリハリをつけて説明しています。表情豊かな点がAさんの最大の魅力です。

研修をしばらく観察して気づいたことがあります。
Aさんは大切なポイントを伝えるときには、「ひとりの参加者=Bさん」を見つめ、その人に向けて話していることが多いのです。

たとえば、「このようにここでの使い方には十分注意してくださいね」や「こんな風に使ってみましょう、よろしいですか」など、語尾ではBさんを2秒ほど見つめ、動きも止めています。

ここは大事!と思うときは、誰かひとりに言葉を送り、自分の動きも止めるというセオリーどおりの伝え方で、非常に説得力があります。ただ問題なのは、いつも同じ参加者、Bさんを見つめていることです。

どうしてBさんを見つめることが多いのか、その原因がようやくわかりました。

Bさんばかりを見てしまう原因とは?

Bさんばかりを見ている原因は次の2点です。

①Bさんは、”うんうん” とうなずいて話を聞いている、とっても熱心な参加態度だったから。
②Bさんが、Aさんから見て左側に座っていたから。

どういうことかというと、まず1点目は
誰でも自分の話に “うんうん” とうなずいて聞いてくれると嬉しいものです。そんな風に熱心に聞いてくれる参加者がいると、自分の説明を理解してくれているんだと思い、とても安心します。

講師はそういう「うなずきマン」のような人をいち早く見つけ、問いかけたりしながらクラス全体を活性化していくことが多いのです。

そのため、AさんがBさんを見る頻度が高くなるのは当然のことでしょう。安心感や信頼感を与えてくれるBさんに視線を送りながら話すのは気持ち良いものです。

しかしそれはあくまでもバランスの問題で、今回のようにBさんに視線が集中するのは、当然良いことではありません。

そして2点目は、BさんがAさんから見て左側に座っていたことです。

人間は脳の構造の関係で、一般的には、利き手と反対を見る傾向があるそうです。右利きは左を、左利きは右をつい見てしまう傾向があるのですね。

Aさんは右利きです。そのため、利き手と反対の左側を無意識に見てしまっていたのです。

そして左側には、うなずいて熱心に話を聞いてくれるBさんが座っています。無意識にBさんに視線を止めていた、というのは当然かもしれませんね。

特にAさんのようにデビュー間もない新人講師は登壇回数も少なく、不安を抱えていると思われます。そんなときにBさんのような熱心な態度の参加者は非常にありがたい存在です。
Bさんに向けて視線を送り、自分を落ち着かせることは自然な言動でしょう。

しかしこのように講師の視線がバランス悪い状態であれば、Bさん以外の参加者には「私とはまったく目があわない」「無視されている」と思われるかもしれませんね。

研修が行われる人数や状況に応じて配慮が必要

さらに、Aさんの会社の事情も少し関係しているように思われます。
Aさんの会社では業務時間内に行われる研修の参加者は、常に4~6名(コの字型かV字型の配置)の少人数です。この日も4名の参加者でした。


大人数の講演や研修の場合には「8の字を描くように」してクラス全体を見るようにしますが、少人数では左右を交互にバランスよく見ることが求められます。

そのため、どちらか一方を見てばかりいると、反対側に座っている参加者には「私たちは嫌われている、無視されている」と思う気持ちが強く感じられるのです。

オブザーブしている私は参加者の斜め後ろの位置(Aさんから見ると右側)に座っていたので、私も同じような気持ちになりました。私たちには興味がないのかしら…

以前の研修でアンケートに書いてあった『Aさんは○○さんばかりを見ていて、私は無視されていた』というのは、このような状況だったのではないかと思うのです。

少人数の場合は左右交互にひとりずつ順番に!

さて研修が終わり、Aさんにフィードバックの時間です。フィードバックのために研修を録画しているので、Aさんと一緒に動画を観ていきました。

フィードバックとは、研修を観察し、事実や感じた点、気づいた点などに基づき、「良い点」「改善点」を具体的にコメントします。目標達成に向けたスキル指導や動機づけなどにより、講師が成長するサポートをするのが、私の仕事です。

私はAさんに、とても説得力があったことを伝えたあと、まず先に改善点を示しました。
改善点を念頭に置きながら動画を観ると、Aさん自身が気づき納得度も高いと思われるからです。

改善点は次のとおりです。

●意識して 自分の利き手と同じ方向を見るようにするとバランスよい視線になる
※脳の構造の関係で、一般的には、利き手と反対を見る傾向がある


●一人ひとり順番に目を合わせて語りかける

Aさんは「私は右利きなので、左側を見る傾向があるということですね」と言いながらしばらく動画を観ていました。

しばらく経って「Bさんばかりを見ていますね。しかも左側に座っているBさん!」と言って苦笑するAさん。

動画を観ていて気付かないわけがありません(笑)
Aさんは新人講師らしい不安な気持ちを話してくれました。「ニコニコして積極的に聞いてくれる人を見てしまいます。その人を見て話すと安心しますし…。向こうも講師を見ているので目が合いますし…。」

以前の研修でアンケートに書いてあった『私は無視されていた』というのも、今回と同じ状況で、左側にノリの良い参加者がいたことがわかりました。
アンケートを書いた人は右側に座っていたということですね。

理由がわかればあとは簡単!
「私は右利きなので、研修前には『まずは右から!』と心の中で唱え、どちらか一方に偏らないよう注意します」と明るく宣言するAさん。

そしてもうひとつ注意したいことは、少人数なので一人ひとりに視線を配ることです。
Bさんひとりに向かって話しかけていたことを、全員に順番にしていきます。誰でも目が合うと「私に話してくれている」と思うように言われています。

『まずは右から!』と意識して、右側の参加者から順番に視線を配っていくことも伝えました。

これで私のフィードバックは終了。Aさんの悩みも解消しました。

その後Aさんはしばらくの間は、登壇するときに必ず録画して、どちらか一方に視線が偏っていないかチェックし、自身の研修を振り返っていました。

『私は無視されていた』とアンケートに書かれることなどもちろんありません。
もともと明るく元気なAさんですから、全員を巻き込みコミュニケーションを取りながら楽しい研修を実施しているのは言うまでもありません。

今回は参加者が少人数(4~6名ほど)の場合の、視線の配り方について書きました。
10名以上大人数の場合は、今回のように左右バランスよく視線を配るだけでは、参加者を引き付け全体を巻き込むことはできません。
こちらについては、また書いていきますね。

最後まで読んでくださってありがとうございます😊

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この記事を書いた人

今井尻 由利子のアバター 今井尻 由利子 大阪流コミュニケーション講師

大阪流コミュニケーションをこよなく愛するコミュニケーション講師。
YouTubeにて”大阪人のコミュニケーション能力は最強!#知らんけど”「大阪×◯◯県ご当地Zoom対談」を開催中!47都道府県制覇を目指している。
現在、M-1グランプリ予選に5年連続出場中!

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