こんにちは！研修講師を育成して早や40年！今井尻由利子です。
★この記事は、経験の少ない新人講師の方で、次のような悩みをお持ちの方のために書いています。
✅ロールプレイングが単調になっているような気がする
✅参加者が自分事として積極的にロールプレイングに参加していない
✅参加者がもっとヤル気になるようなフィードバックができないだろうか
✅研修での知識が「実践力」として定着しない
コールセンターの社内講師Bさんは、今年、新入社員研修をメイン講師として担当することになりました。
講師デビュー2年目。アシスタントを卒業したBさんは、「嬉しいです。頑張ります！」と、たいへん張りきっていました。
ところがある日、新入社員の電話コミュニケーション研修を終えたBさんは、まったく元気がありません。
「いったいどうしたの？」とBさんに話を聞いてみると、次のように答えてくれました。
「ロールプレイングが役に立ってるのか自信がないんです…」
「参加者のみんなが自分事として参加しているのかわからなくって…」
「私の進め方が良くないのでしょうか？」と今にも泣きだしそうな表情のBさんです。
あんなに張りきっていたBさんに、いったい何があったのでしょうか？
「それでは一度、Bさんの研修にオブザーバーとして参加してみますね。そして私が感じたことをフィードバックしましょう」と伝えました。
そして私は、Bさんの研修を観察することにしました。
Bさんの問題点
Bさんは、筋道立ててしっかり説明し、具体例も豊富なので、たいへんわかりやすく安心して聞くことができます。
しかしロールプレイングに進んでからは、講義のときとは違い、若干、力んでいるように感じられました。
というのも、新入社員は熱心に知識を学んでも、それが実際に現場で使えるかどうか不安に感じるもの。
だからその不安を解消し、「現場でしっかり使えるようにしなくっちゃ！」というBさんの強い想いが、かえってBさん自身を緊張させているように思えたからです。
このような気持ちは、コミュニケーターを経験しているBさんだからこその気遣いから生まれたのかもしれません。
そのせいか、Bさんは「ロールプレイングをしっかりやれば安心ですよ」「失敗しても大丈夫ですよ」といった言葉を、何度も使っていました。
おそらく新入社員を励ますつもりだと思うのですが、それが逆にみんなの緊張感を高めているように思われたのです。
Bさんが一人ひとりにフィードバックする際も、新入社員たちはこわばった表情で聞いており、残念ながらあまり効果的なロールプレイングではありませんでした。
これらの様子から、参加者がもっと伸び伸びと、楽しみながらロールプレイングに参加できる方法が不可欠だと強く感じたのです。
具体的な改善方法
研修をオブザーブして気づいたことは、確かにBさんのロールプレイングの進め方には問題がありましたが、”あること”を実践すれば、この問題はすぐに解決できるとすぐにピンときました。
さて、研修が終わり、私からBさんへのフィードバックの時間です。
私は、Bさんの問題点を改善するために「フィードバックシートの活用」をお勧めしました。
Bさんは私の話を聞いてホッとしたのか、セキを切ったように話し始めました。
「研修で習った知識をしっかり定着させ、『使える力』に育てるにはロールプレイングがたいへん重要だとわかっているので、しっかりやらねばという気持ちが強く出すぎてしまって……ロールプレイングには講義以上に力が入っていたように思います。」
「確かに少し空回りしていたかもしれないですね。でもBさんのように新人さんに寄り添う気持ちがあれば、大丈夫。次からは楽しみましょう」と私は伝え、実践的で効果的、しかも楽しいロールプレイングの方法を具体的に示したのでした。
そして、Bさんは早速このシートを使ってロールプレイングをした結果、参加者からは次のようにたいへん喜ばれるようになりました。
「ロールプレイングがとっても楽しい！」
「習ったことが本当にたいへん役に立ってるんです」
「フィードバックシートのおかげ。これはもう宝物です！」
また、現場のスーパーバイザーやマネージャーからも、次のような嬉しい声が届いているのです。
「コミュニケーターが自信を持って応対している」
「とても意欲的に取り組んでいる」
ではなぜ「フィードバックシート」を活用するだけで、参加者からも現場からも、こんなにたいへん喜ばれるようになったのでしょうか？
その具体的な活用方法を、順にお伝えしていきますね。
フィードバックシートの活用方法
「フィードバックシート」というと、チェック項目に基づき電話応対の良し悪しを評価する、単なる評価表をイメージするかもしれませんが、
このシートの使い方によっては、新人同士が学び合い、お互いの成長を後押しする「応援ツール」となるのです。
具体的にどのように使うかというと・・・
ロールプレイングは、通常、「お客さま役」と「コミュニケーター役」に分かれて実施します（観察者を設定する場合もあり）。
その際、コミュニケーター役の新人が応対している間、それ以外の参加者全員が、その新人の応対を評価するために「フィードバックシート」を使用するのです。
このシートには、新人が迷わず、簡単なチェックだけで評価できるよう、研修で学んだ具体的なポイントが記載されています。また、電話応対の流れに沿って評価できるような工夫もしてあるのです。
★参考① 簡単にチェックできる「観察シート」
★参考② 電話応対の流れに沿って評価できる「フィードバックシート」
どちらのシートにも、新人が迷わず評価できるよう工夫するのがポイントです。
シートを2種類用意するところに、新入社員の「もっと頑張りたい！」という意欲をグッと引き出す、大切な理由が隠されているのです。
誰でもロールプレイングを続けていくちに、少しずつスキルを身につけていきます。
だからこそ、最初は「声のトーンは明るかったか？」「話し方の癖は？」など、気軽にチェックできる項目から始めるのがオススメです。
これは、ロールプレイングを通して、新人が「できた！」と自信をつけるための第一歩。とても大事なステップなんです！
そして、少し慣れてきた頃には、「電話応対の流れを意識して評価する」というような、もう少し実践的な視点を取り入れたシートへと切り替えます。
このように、新人のスキルに合わせて評価項目を調整することが、とても重要なのです。
それは、新人さんが、「スキルアップした。できた」と実感することに繋がり、学びへのモチベーションが向上するからです。自ら成長していく力を引き出す鍵になります。
仲間からのフィードバックは、温かいメッセージ
そして、ロールプレイングが終了した直後、評価者である参加者全員が、そのフィードバックシートを、コミュニケーター役の新人に直接手渡します。
講師からのフィードバックはもちろん重要です。
しかし、研修を一緒に受けている仲間からの具体的な評価が、温かいメッセージとして1枚の紙に残ることは、新人の心に深く響きます。
「わあ、こんなコトまで気づいてくれたんだ！」「えっ、こんな癖があったのかな？」など、どんなコメントであっても素直に嬉しいものなんです。
このように形として残る温かいメッセージは、
ロールプレイング直後だけでなく、後から見返しても、
「ちゃんと見てくれている人がいるんだ」「応援されている」
という確かな実感を与えてくれるものです。
この実感が新人の皆さんの心の支えになり、「よし、もっとやってみよう！」と自分を信じて、どんどん成長の道を歩んでいくのです。
このように、フィードバックシートは、単なる評価ツールではありません。
新人同士が学び合い、お互いの成長を後押しする「応援ツール」
でもあるのです。
評価する側も、仲間を客観的に観察し、良い点を見つけて共有する経験を通して、自身の学びを深めることができます。そうすることで、一人ひとりのモチベーションが、研修全体の活気へと繋がるポジティブな流れへとなっていくのです。
このシートが、新人の「もっと頑張りたい！」という意欲を引き出し、「自ら育つ力」を力強く後押ししてくれるでしょう。
私のフィードバックを受けたBさんは、表情がとても明るくなっていました。
Bさんは、「楽しみながらお互いを高め合うというのがとてもいいですね！私自身もロールプレイングを楽しみます！」と、強く宣言してくれました。
そして、この言葉どおり、Bさんはロールプレイングでフィードバックシートを使った結果
「ロールプレイングでやったことが現場で役立っている、とアンケートに書いてくれる人が多いんです」と、嬉しい報告をしてくれました。
今では自信に満ち溢れた表情で研修を実施しているBさんです。
もしあなたが、新人の「自ら育つ力」を大切にしたいとお考えでしたら、今回ご紹介したような「フィードバックシート」を最大限に活用してくださいね！
★もしあなたがBさんと同じような悩みがあり、自分で悩みが解決できない、客観的な意見が欲しいという場合は、私からアドバイスさせていただきます。ぜひお声がけください。
(新入社員研修のロールプレイングについては以下の記事でも詳しく解説しています。合わせてご覧ください。）
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