こんにちは!研修講師を育成して早や40年!今井尻由利子です。
★この記事は、デビューしたばかりの新人講師の方で、次のような悩みをお持ちの方のために書いています。
✅参加者が熱心に聞いていないように思う
✅参加者の反応がイマイチでヤル気がないように感じる
✅ワークやディスカッションで、参加者が真剣に取り組んでいない
✅初めて研修の設計を任されたが効果的な研修の作り方を知りたい
コールセンターで研修を行う新人講師Bさんは、新入社員のマナー研修を担当しています。
新人がセンターに配属されて2ヶ月ほど経ったころ、言葉づかいについてフォローしてほしい、とセンターから依頼がありました。
Bさんにとって、初の研修設計です。たとえ短時間で復習のような内容であっても、オリジナルの研修を作るのは初めてのこと。
Bさんはたいへん張り切って開催したのですが、なにやら浮かぬ顔で悩みがありそうです。
いったい何があったのでしょうか?
なぜ、参加者は熱心に聞いていないのか?
センターから依頼されたのは、新人の言葉づかいの復習でした。
新人研修で習った敬語表現と感じの良い言葉づかいの復習、そして言葉づかいの悩み相談の時間も含めて90分で設計してほしいというものでした。
Bさんは2回に分けて実施するように組み立て、まず1回目が終わったのですが・・・
私はBさんからこんな相談を受けました。
「問題がちゃんと解決できるように研修を作ったのですが、参加者の反応がイマイチでワークも熱心に取り組んでいないように感じました。次の研修もちょっと不安で」
と、自信を完全になくしている様子のBさんです。
「では一度、研修を観てみましょう。次の研修にオブザーブさせてくださいね」と、私はBさんの研修にオブザーバー(研修の観察者)として参加することにしました。
研修テーマへの導きがなく、いきなり教えだすBさん
「問題がちゃんと解決できるように研修を作った」とBさんが言うとおり、研修は知識がたっぷりつまった、たいへん中身の濃い内容でした。
しかし研修前にテキストを見た際、Bさんの問題点が見えたような気がしました。
そして研修が始まると、それは確実になったのでした。
Bさんは研修の目的やゴールを伝えるとすぐに「敬語の種類は3種類ありましたね。尊敬語~」と、敬語の基本について説明を始めました。
センターから、言葉づかいをしっかりやってほしいという声があったので、Bさんにしてみれば、敬語の基本ルールをまず徹底して再学習することを優先したものと思われます。
しかしこれこそがBさんの最大の問題点だったのです。
その問題点というのは、研修テーマへの導きがなかったことです。
研修テーマへの導きがなく、いきなり知識を教えているので、参加者にとっては内容への興味や関心を持ちにくく、学習への意欲が低下しているのです。
どういうことかというと、研修設計には「参加者の気持ちに寄り添う」というセオリーがあります。しかし残念ながらBさんの設計はセオリーどおりでない。要するに、参加者の気持ちから離れた設計をしていたということなのです。
テキストを見た際、Bさんの問題点が見えたような気がしたと感じたのは、最初のページから知識のオンパレードになっており、研修テーマへと導く項目がなかったからです。
学習意欲が低下している参加者は、全体を通して “反応がイマイチでワークも熱心に取り組んでいない” ように感じられました。Bさんの感想のとおりです。
参加者の気持ちに寄り添った研修の流れとは
さて研修が終わり、私からのフィードバックの時間です。
初の研修設計にトライしたBさんを労ったあと、私はBさんに、敢えて視点を変えるために次のような質問をしました。
そのときのやり取りです。
わたし / 講師のスキルの中で、質問の仕方という点に限定すると、何か困っていることや不安に思うことはありますか?
Bさん / 質問した際、予想外の答えが返ってきたらどうしよう、最初に誰を指名すると良いかなどに困ります
わたし / 講師アルアルですね!では、質問スキル研修の冒頭で、”今の悩みを書いてみましょう、その後メンバーと共有してみましょう”というワークがあったとすれば…?
Bさん / それは嬉しいです。他の人の悩みや意見も聞けますし…
わたし / では、こういうのはどうですか?予想外の返答に対応している講師の動画を観て、良い点や改善点を考察するというワークがあったとすれば…?
Bさん / それも嬉しいです。勉強になります
わたし / こういうワークから研修が始まると、Bさんはどのような気持ちになりますか?
このようなやり取りが続いた後、Bさんは何かに気づいた様子で、
「今回の研修で参加者の反応があまり良くないと感じるのは、今の私のような気持ちじゃないからってことかなあ…」
「今のBさんのような気持ちとは?」と尋ねると、
「どんなことが学べるのかと興味を持ったり、嬉しくなったり、前のめりになったりなど」と答えるBさんでした。
たいへん重要なことに気づいたBさんでした。
そこで、効果的に学習を進めるためのプロセスについて説明していきました。
これが「参加者の気持ちに寄り添う研修設計」です。
この5つのステップを知ったBさんは、先ほどの私とのやり取りの中で感じたことを話してくれました。
他のメンバーとディスカッションしたり動画を観たりすると、きっとこういう気持ちになると思うんです。
「現場アルアルですね」
「この先、経験するかもしれない」
「あの経験はそういうことだったのか」
「実際、どうすればいいんだろう」
などと、気持ちが盛り上がるのではないでしょうか。
そうですね、参加者の気持ちの盛り上がりとは、言い換えれば、参加者に研修への興味や関心を持ってもらうことと言えます。参加者が効果的に学ぶためには、まず冒頭で参加者の興味や関心を引き付けることは欠かせないのです。
今回、Bさんが実施した研修では、冒頭の「テーマへの導き」があれば、あとはしっかりと設計できているため問題なく進んでいくと思われます。
敬語や感じの良い言葉づかいをしっかり教え(知識を教える)、具体例を数多く示し(モデルを見せる)、現場に応じた練習問題があり(実施する)、Bさんからフィードバックをする(振り返り)というしっかりした流れになっているからです。
Bさんの研修の改善策は、どんな「Discovery(動機づけ)」にするか、何をすれば参加者の興味や関心を引き付けることができるかという点です。
これで私のフィードバックは終了です。
Bさんが悩んでいた「問題がちゃんと解決できるよう研修を作ったのに、参加者の反応がイマイチでワークも熱心に取り組んでいないように感じる」という原因もわかりました。
「参加者の気持ちに寄り添う研修設計がいかに大事かということがよくわかりました。学習ステップを常に念頭に置き、研修づくりをしていきます!研修づくりが楽しくなりました😄」
と明るく宣言するBさんでした。
学習ステップに沿った研修設計の例
Bさんは「研修づくりが楽しくなりました!」と宣言したとおり、その後の研修では5つの学習ステップをしっかり押さえ、学習効果の高い研修を実施しています。
その中のひとつをご紹介しましょう。新人が対象の「積極的な表現」を学ぶ研修です。
導入からフィードバックまでの一連の流れを研修参加者の心理に基づいて組み立てています。
参加者の気持ちの移り変わりは次のとおりです。
①消極駅な表現の例を見ることで・・・
⇒あれ、この使い方は消極的だったの?普段からよく使っていたけど。知らなかったなあ
②積極的な表現の定義や使用目的、効果について説明を受け・・・
⇒積極的な表現とはこういうことを言うのか、こんな効果があるのか
③具体例を見たり、消極的な表現との違いを考えることで・・・
⇒使い方がわかった、考え方がわかった
④役割演習をやってみることで・・・
⇒知識だけでなく実際の使い方がわかった
⑤フィードバックを受けて・・・
⇒そうか、改善点がわかった、次はしっかりできる
この学習ステップはリアル研修でもオンラインでも変わることはありません。
どういう順に組み立てるかを覚えておくと便利ですね。
「学習ステップを常に意識して研修設計をすると、参加者がイキイキしていて前のめりになっているのがよくわかります!」と笑顔で報告してくれるBさんでした。
講座のクオリティアップを図りたい方のために、こちらのセミナーも開催しております。
合わせてご覧ください。
最後まで読んでくださってありがとうございます😊
新人講師の方のお悩みを個別相談でお受けしています
講師としてデビューして間もない方、ひとりで悩んでいませんか?
下記よりお気軽にお問い合わせください。